文苑堂ベストセレクション
2022年 第167回直木賞を受賞された窪美澄さんの作品をご紹介します。
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夜に星を放つ
文藝春秋/1,540円(税込)
かけがえのない人間関係を失い傷ついた者たちが、
再び誰かと心を通わせることができるのかを問いかける短編集。
コロナ禍のさなか、婚活アプリで出会った恋人との関係、
30歳を前に早世した双子の妹の彼氏との交流を通して、
人が人と別れることの悲しみを描く「真夜中のアボカド」。
学校でいじめを受けている女子中学生と亡くなった母親の幽霊との
奇妙な同居生活を描く「真珠星スピカ」など、この著者だからこそ
掬い上げることのできる、人の心の揺らぎが輝きを放つ五編。
ふがいない僕は空を見た
新潮社/605円
高校一年生の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスしている。
やがて、彼女への気持ちが性欲だけではなくなってきたことに気付くのだがー。
姑に不妊治療をせまられる女性。
ぼけた祖母と二人で暮らす高校生。
助産院を営みながら、女手一つで息子を育てる母親。
それぞれが抱える生きることの痛みと喜びを鮮やかに写し取った連作長編。
R-18文学賞受賞、山本周五郎賞W受賞作。
KADOKAWA/682円
結婚して3年、35歳の知佳は智宏と2人暮らし。
産休に入る同僚を横目に、結婚しているだけで幸せじゃないか、
とメロンパンの欠片をコーヒーで飲みくだす日々だ。
不妊治療を経て無地に出産した妹を見舞った夜、
智宏から「赤ちゃん、欲しくない?」と問われた知佳は、咄嗟に答えられず…
既婚、未婚、離婚、妊活、子供嫌い…
全ての家族の在り様に注ぐ温かな眼差しに満ちた5つの物語。
小学館/1,760円
綺麗な着物を着せたる。
道楽者の父の言葉に誘われて、十二歳だった私は、
気がつけば大阪で舞妓見習いをしていた。
それからは苦界を生きて、生きて、生き抜いた。
十四の時に切り落として旦那に突き付けた小指は、
いつの間にか遠い過去になっていたー。
芸妓、社長夫人、映画女優を経て、38歳で出家。
明治から昭和を走り抜けた、ある女性の流転の日々。
トリニティ
新潮社/935円
仕事、結婚、男、子ども。
私はすべて手に入れたい。
欲張りだと誇られてもー。
1960年代、出版社で出会った三人の女。
ライターの登紀子は、時代を牽引する雑誌で活躍。
イラストレーターの妙子は、才能を見出され若くして売れっ子に。
そして編集雑務の鈴子は、結婚を機に専業主婦となる。
変わりゆく時代の中で、彼女たちが得たもの、失ったもの、
そして未来につなぐものとは。
軍神の長篇小説。