第163回芥川賞受賞を受賞された
富山県出身の作家、高山羽根子さんの作品を紹介。
10月には新作の発売も予定されています。
首里の馬
沖縄の古びた郷土資料館に眠る数多の記録。
中学生の頃から資料の整理を手伝っている未名子は、
世界の果ての遠く隔たった場所にいるひとたちにオンライン通話で
クイズを出題するオペレーターの仕事をしていた。
ある台風の夜、幻の宮古馬が庭に迷いこんできて……。
世界が変貌し続ける今、しずかな祈りが切実に胸にせまる感動作。
新潮社 1,375円
如何様
復員した画家は本物なのか?いや、本物と偽物になんの違いがあるというのか。
「人は、まったく同じものがふたつ以上あると、ひとつを本物、
残りを偽物と決ないと落ち着かない生き物なのかもしれませんね」
敗戦後、戦地から復員した画家・平泉貫一は、出征前と同じ人物なのか。
似ても似つかぬ姿で帰ってきたものの、時をおかずして男は失踪してしまう。
兵役中に嫁いだ妻、調査の依頼主、妾、画廊主、軍部の関係者たち、
何人もの証言からあぶり出される真偽のねじれ。
調査を依頼された私が辿りついたのは、貫一が贋作制作を得意としていたという事実だった。
朝日新聞出版 1,430円
おばあちゃんは背中が一番美しかったこと、
下校中知らないおじさんにお腹をなめられたこと、
自分の言い分を看板に書いたりする
「やりかた」があると知ったこと、高校時代、
話のつまらない「ニシダ」という友だちがいたこと…。
大人になった「私」は雨宿りのために立ち寄ったお店で「イズミ」と出会う。
イズミは東京の記録を撮りため、SNSにアップしている。
映像の中、デモの先頭に立っているのは、ドレス姿の美しい男性、成長したニシダだった。
集英社 1,430円
居た場所
かつて実習留学生としてやってきた私の妻・小翠(シャオツイ)。
表示されない海沿いの街の地図を片手に、私と彼女の旅が始まる。
記憶と存在の不確かさを描き出す、まったく新しい、「生」の魔法的リアリズム。
河出書房新社 1,540円
オブジェクタム
小学生の頃、祖父はいつも秘密基地で壁新聞を作っていた。
手品、図書館、ホレリスコード、移動遊園地―大人になった今、
記憶の断片をたどると、ある事件といくつもの謎が浮かんでは消える。
第2回林芙美子文学賞受賞作「太陽の側の島」も同時収録。
朝日新聞出版 1,430円
うどんキツネつきの
犬に似た奇妙な生き物を育てる三姉妹の人生をユーモラスに描き、
第1回創元SF短編賞佳作となった表題作、
郊外のぼろアパートの住人たちの可笑しな日々「シキ零レイ零 ミドリ荘」、
十五人姉妹が暮らす孤島を見舞った異常事態「母のいる島」、
ウェブ上に現れた子供の日記から始まるシュールな冒険「おやすみラジオ」、
ねぶたの街・青森を舞台に時を超えて紡がれる幻想譚
「巨きなものの還る場所」の全五編を収録。
東京創元社 1,034円